月に家は建てられる?費用や課題、土地所有権のウソ・ホントまで徹底解説!

2025.08.06

夜空に輝く月を見上げて、「あそこに住めたらどんな景色だろう」と想像したことはありませんか?SF映画の世界だった月面での生活が、今、現実の目標として語られ始めています。

結論から言うと、現時点で月に家を建ててすぐに住むことはできません。 しかし、これは決して不可能な夢物語ではありません。

アメリカが主導し日本も参加する国際プロジェクト「アルテミス計画」では、人類を再び月面に送り、持続的な活動の拠点を築くことが目指されています。(出典:JAXA

この記事では、月に家を建てるという壮大な夢について、以下の点を分かりやすく解説します。

 

なぜ今は無理?月が過酷すぎる3つの理由

私たちが地球で当たり前に暮らせているのは、この星が驚くほど恵まれた環境だからです。それに比べ、月は人間が生身で生きるにはあまりにも過酷な世界です。

 

そもそも月ってどんな場所?

  • 重力: 地球の約6分の1。体がふわふわと浮き、長期間滞在すると骨や筋肉が衰えるリスクがあります。
  • 大気: 大気がほとんどない真空状態のため、気圧で体を守ることができず、音も伝わりません。
  • 温度差: 大気がないため、太陽が当たる昼は110℃以上、夜はマイナス170℃以下と、その差は約300℃にもなります。(出典:JAXA)

このような基本的な環境の違いに加え、人間が住めない決定的な理由が3つあります。

 

危険な宇宙放射線と隕石
地球は厚い大気と磁場によって、宇宙から降り注ぐ有害な放射線や小さな隕石から守られています。しかし、月にはそのバリアがありません。常に危険に晒されるため、頑丈な居住施設が不可欠です。

 

生命維持に不可欠なものがない
呼吸するための酸素も、飲むための水も、月には地球のように豊かな形では存在しません。食料ももちろん、すべてを地球から運ぶか、月面で生産する必要があります。

 

遠すぎる距離とコスト
地球から月までの距離は約38万km。この距離へ物資を運ぶには莫大なコストがかかります。現在の技術では、物資1kgを宇宙へ運ぶのに数百万円かかるとも言われています。(出典:内閣府 宇宙政策委員会

 

月に家を建てる!乗り越えるべき5つの巨大な壁

この過酷な環境を克服し、月面に生活圏を築くため、世界中の科学者や技術者が研究開発を進めています。特に重要となる5つの課題と、その解決策を見ていきましょう。

課題①【環境】放射線と隕石からどう身を守る?

頑丈な家を建てる必要がありますが、資材を地球から運ぶのは非現実的です。そこで「現地にあるものを利用する」という考え方(ISRU:現地資源利用)が鍵となります。

 

月の地下洞窟「溶岩チューブ」の活用:
かつて溶岩が流れたことでできた地下の空洞を利用するアイデアです。日本の月周回衛星「かぐや」は、この溶岩チューブの候補となる巨大な縦穴を発見しました。地下であれば、放射線や隕石、激しい温度変化から安全に身を守ることができます。(出典:JAXA/ISAS)

月の砂「レゴリス」を使った3Dプリンター建設:
月面を覆う砂「レゴリス」を建築材料として使い、3Dプリンターでドーム状の基地などを建設する技術開発も進められています。

 

関連記事:3Dプリンター住宅やプレハブ住宅、コンテナ住宅は通常住宅とどこが違うの?メリット、デメリットは?

 

参考文献:月の地下に巨大な空洞を確認(2017年10月18日発表

参考文献:【宇宙科学の最前線】月地下溶岩チューブの天窓(ISASニュース 2010年2月号掲載) 

 

課題②【エネルギー】14日間続く「夜」をどう乗り切る?

主なエネルギー源は太陽光発電ですが、月の夜は約14日間も続きます。この長い夜を乗り切るための電力確保が大きな課題です。

 

発電と蓄電:
太陽が常に当たる「永久日照の山」と呼ばれる場所に太陽光パネルを設置する方法や、高性能な蓄電池の開発が検討されています。

 

次世代の発電方法:
NASAは、天候や日照に左右されずに安定した電力を供給できる、月面用の小型核分裂炉の開発を進めています。これは将来の火星探査にも応用できる技術として期待されています。(出典:Business Insider Japan / NASA)

 

参考文献:JAXA|「かぐや」のこれまでの主な科学的成果

参考文献:宇宙探査イノベーションハブ|月面でのエネルギー確保

参考文献:Business Insider Japan|NASA、月面用の小型原子炉を開発中…火星探査への応用も視野に

参考文献:NASA公式サイト|Fission Surface Power

 

 

課題③【水】生命の源、水はどこから?

生命維持に不可欠な水は、飲むだけでなく、酸素を作ったり、ロケットの燃料(水素)にしたりと、非常に重要です。

 

月の「氷」を利用:
近年の探査で、月の南極や北極など、太陽の光が全く当たらない「永久影」に、氷の状態で水が存在することが分かってきました。(出典:NASA)NASAは2024年以降に打ち上げ予定の探査ローバー「VIPER」で、この氷の量や分布を詳しく調査する計画です。追加調査VIPERローバーそのものは「完成・試験済み」で現在保管中ですが、NASA直下での単独打ち上げ計画は2024年7月にキャンセルされました。現在は「完成機体を誰が月に運ぶか」をめぐり、商用パートナーシップの公募・交渉を進めている段階です。正式なパートナー決定後に、再び打ち上げスケジュールが動き出す見込みです。

 

高度なリサイクル技術:
生活で使った水をほぼ100%再利用する、国際宇宙ステーション(ISS)で培われたような高度なリサイクルシステムも必須となります。

 

課題④【食料】月面での自給自足は可能か?

長期滞在のためには、食料を月面で生産する「宇宙農業」が不可欠です。

 

月面植物工場:
LED照明などを使い、閉鎖された空間でレタスなどの葉物野菜を水耕栽培する技術は、ISSでも実験が進められています。千葉大学など日本の研究機関も、宇宙環境に適した品種改良や栽培システムの開発で世界をリードしています。(出典:EMIRA, 千葉大学)
新鮮な野菜は、栄養だけでなく、宇宙飛行士のQOL(生活の質)向上にも繋がります。

 

課題⑤【酸素】どうやって呼吸する?

人間が呼吸するための酸素を確保する方法も研究されています。

 

水の電気分解:
確保した水を電気分解して、水素と酸素に分けるのが最も基本的な方法です。

 

月の砂から酸素を抽出:
月の砂「レゴリス」は、その質量の約40〜45%が酸素で構成されています(酸化物として)。このレゴリスを高温で熱して電気を流す「溶融塩電解」という手法で、酸素を取り出す技術を欧州宇宙機関(ESA)などが開発しています。副産物として金属も得られるため、一石二鳥の技術として期待されています。(出典:AXIS, ニューズウィーク)

 

参考文献:AXIS|月にある砂から酸素が生成できる!? 「レゴリス」の模擬土壌からの酸素抽出を実験(2020年1月23日)

参考文献:ニューズウィーク日本版|「月の砂」から酸素を抽出、実用化に向けてテストプラント開設(2020年1月24日)

 

一体いくらかかる?月に家を建てる天文学的なコスト

では、仮に月に家を建てるとしたらいくらかかるのでしょうか?

現時点で正確な金額を出すことは不可能ですが、過去の例からその規模を推測できます。

 

アポロ計画の費用:
1960年代〜70年代に人類を月面に送ったアポロ計画の総費用は、現在の価値に換算すると約12兆円とも言われています。(出典:情報通信総合研究所)これは最初の月面着陸までの費用であり、居住施設の建設費は含まれていません。

 

国家プロジェクトレベルの巨大事業:
月に家(基地)を建てることは、一個人の資産家や一企業では到底実現できない、国家レベル、あるいは国際協力レベルの巨大プロジェクトです。アルテミス計画のような国際的な枠組みで、数兆円から数十兆円規模の投資が、段階的に必要になると考えられます。

 

参考文献:情報通信総合研究所 InfoComニューズレター|アポロ11号月面着陸50周年とこれからの50年(2019年7月12日)

参考文献:CNN.co.jp|有人月面着陸に最大3兆3千億円必要 NASAが試算(2019年6月15日)

 

 

気になる噂の真相!月の土地は本当に買えるのか?

「月の土地を1エーカー(約1200坪)数千円で販売します」という広告を見たことがあるかもしれません。友人へのユニークなギフトとして人気ですが、法的に見て本当に所有権を得られるのでしょうか?

 

結論:月の土地の所有権は買えません。

 

1967年に発効し、日本を含む宇宙開発を行う主要国が批准している「宇宙条約」の第2条には、以下のように定められています。

月その他の天体を含む宇宙空間は、主権の主張、使用若しくは占拠又はその他のいかなる手段によっても、国家による取得の対象とはならない。 (出典:宇宙法、RCLO)

これはつまり、「どの国も、月を自分の領土だと主張したり、所有したりしてはいけない」ということです。国が所有できない以上、その国の国民である個人が所有権を主張することもできません。

 

「月の土地の販売」の正体とは?
現在、民間企業が販売しているのは、土地の所有権を法的に証明する「登記簿」ではなく、「月の土地権利書」と称する商品です。これはあくまで記念品やギフトとして楽しむものであり、法的な資産価値や所有権は一切ないということを理解しておく必要があります。

 

参考文献:RCLO(Atsumi & Sakai)|宇宙に関する法律問題(宇宙法)|3 月の土地の所有権取得の可否

参考文献:外務省|月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約

参考文献:JAXA|宇宙法|月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約(宇宙条約)

 

月面生活は、夢物語から「実現可能な未来」へ

本記事で見てきたように、月に家を建てて住むには、放射線、エネルギー、水、食料、酸素といった、乗り越えるべき巨大な壁が数多く存在します。そして、そこにかかる費用も天文学的なものです。

しかし、科学技術の進歩は、かつてSFの世界だった月面生活を、一歩ずつ「実現可能な未来」へと近づけています。

アルテミス計画では、2020年代後半に日本人宇宙飛行士が月面に降り立つことも目標とされています。彼らが月で活動する拠点が、未来の「月面の家」の第一歩となるでしょう。

私たちの子供や孫の世代が、夏休みに「月のおじいちゃんの家に遊びに行く」なんていう会話をする日が、いつか来るのかもしれません。今後の宇宙開発のニュースに、ぜひ注目してみてください。

 

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